「水なます」と一致するもの

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秋の気配を探すと思ったよりもたくさん見つかるのだ。
セミの声が虫の声に代わり、夕暮れ時が早くなった。
でも昼の気温は相変わらず35度前後なのだから、夏は続く、のである。
暑さ故に、お昼ご飯などについつい作るのが、「りゅうきゅう」とか「冷汁」とか「水なます」とか、そして「がわ」なのだ。
要するに冷たーーいみそ汁。
ボクはこれをかってにシャバシャバと言っている。
これを炊きたてのご飯にかけてシャバっと一気食いして、炎熱地獄に出る。
みその塩分と、香辛野菜のさわやかさが、まことに心地よく、味わいが夏バテ小僧を追い払ってくれる。

さて、今回のものは「がわ」である。
その昔、静岡県御前崎に通っていたことがある。
御前崎沖はマダイやハマダイ、イサキに根魚のハタ類などの宝庫。
その上、御前崎港は防波堤釣りのメッカでもある。
夏の防波堤でのこと、小アイゴを釣っていたら、お隣の老人が教えてくれたのが「がわ」なのである。
スカリで生きているアイゴをその辺の板の上で三枚に下ろし、とんとんとたたく。
小骨も腹骨もついたまま、とにかく細かくたたき、一貫目氷を砕いて浮かせた水にみそと一緒に放り込んでキュウリ、ネギを切り入れて出来上がり。
コッヘルにお握りをほぐし、「がわ」をかけて食ったら、それはそれはうまい! を通り越したうまさだった。

このように見知らぬ人との出会いがあるところが、防波堤釣りのいいところなのだ。
老人はこれを「がわ」といい、「本来はカツオとかメジ(マグロの幼魚)、ワカナゴ(ブリの幼魚)で作るのだ」と教えてくれた。
この「がわ」の由来など現在調べようとしているところだが、御前崎、相良などの周辺では民宿、食堂などでも食べられる。
元漁師さんのお宅でも食べさせていただいたが、我が家で作っているものとほとんど変わらない。
また「がわ」の詳しい説明などは先送りする。
ただ要するに漁師さんが船上で作っていた料理に違いない、ということを明記しておきたい。
地元の人だろうけど、みそと薬味をいつも持ってきているところが達人を思わせたのであった。

以後、永かった独身時代にはたびたび作ることになる。
意外に家族を持つと作らないもので、再び一人暮らしになって、また作るようになった。
作るのが簡単だというのもあり、またご飯粒が喉を通らないくらいの酷暑にはこのようなシャバシャバしかないということもある。

さて、今年はカツオが安くてうまい。
その半身を買い求め、四分の一を刺身、たたきで。
後の四分の一を「がわ」にする。
みょうが、青じそ、四葉きゅうり、ネギがなかったので玉ネギ(意外に漁師は玉ネギが好き)など、あるったけの香りのある野菜を用意すると、あっという間に出来る。
まことにこのシャバシャバはインスタントなのである。
コツはとにかくキンキンに冷やすことだけだ。
暑い日盛りの昼ご飯にもいいけれど、酒宴のあとにもまことに結構である。
夏バテ小僧よ飛んでいけ! てな勢いが出る。

材料(2人前)
カツオ4分の一を細かく切ってたたいたもの、四葉きゅうり1本、青じそ2枚、ミョウガ2個、玉ネギ八分の一(野菜は総て適当に)、下ろししょうが、白ごま、味のいいみそ適宜、水320㏄、氷

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作り方
1 器に氷と水を入れて、みそを溶かして濃いめのみそ汁を作る。氷が溶けて薄まるのでとにかくみそは多めに。

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2 ここにカツオをたたいたものを入れ、野菜を入れて出来上がり。最後に白ごまをちらす。

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このままみそ汁のように食べてもよし、ご飯にかけて食べてよし。

ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、カツオへ


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
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暑いのだけど、毎日が充実している。
腹がよく減る。
ときどき空腹感で目が回る。
けど、おなか周りの脂肪が気になって、好きだったカツカレーにナポリタンなんてダブル糖質の食事は遙か遠くにあって、懐かしいものとなってしまっている。
でも食ったという満足感が欲しい、なーーー。

今年はダイエット中であるのと(結果は出てません)、忙しいので、日々の食事を鑑みるに、「シャバシャバ飯」がいいじゃないか?
思いついたので、イサキ、マイワシ、マアジで連日のごとく「シャバシャバ飯」を作っている。
「シャバシャバ飯」とはボクの造語で、千葉県外房では「水なます」という。
簡単にできるので、魚貝類料理の家庭での基本的なものになるはずだ、と考えている。

外房にはよく通ったものである。
クロダイ釣りに夢中になり、ショッコのカッタクリ釣りにはまり、フグのカットウ釣りにも熱中したのであった。
「水なます」を覚えたのは、船釣りを始めた20代後半のこと。
マダイ狙いで遠路、外房へ。
ところが突然の強風で船が出なくなり、凪待ちの末に諦めたこことがある。
そんな時、船宿でごちそうになったのが「水なます」。
船の生け簀で泳がしていた小イサキ、小アジを使ったもので、これが激うまだったのだ。

さて、「水なます」とは夏の香辛野菜と、魚、みそだけで作る冷たい冷たいみそ汁で、そしてとてもインスタントな食いものである。
本来、漁師が船上で食っていたものだからあらっぽく、いい加減に作らないとうまくない。

これをかき込んで酷暑の中に出かけていく。
不思議なものでみその香りと、ほどよい塩分でとても身体が清々しい。
盛りのミョウガ、青じそ、キュウリなども丼のなかで香り高くある。
激辛の青唐辛子を加えるのはボクの工夫なのだけど、こいつも夏バテに効くのである。
昔、「水なます」で焼酎を飲むのが好きだという漁師の話を聞いたことがあるが、この料理に限ってはアルコールはダメだと思う。
一日の活力源、元気を一杯出すための料理が「水なます」なのだ。

材料
イサキ中1尾、キュウリ半分、ミョウガ2個、青じそ4枚、ネギ、青唐辛子1本、冷たい水320㏄、みそ適宜

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作り方
1 イサキは三枚に下ろして皮を引き、細かく切る。香辛野菜は千切り、小口切りなど切っておく。
2 大振りの器に水を入れる。ここにみそを溶かす。味見して飲むと塩辛いと感じるくらいがいい。

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3 冷たいみそ汁に氷を入れ、キンキンに冷えたらイサキの身を入れる。

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4 香辛野菜も入れて出来上がりだ。青唐辛子は混ぜ込んでもいいし、好みで食べるときに。

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あれば白ごまを入れてもいい。


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、イサキへ


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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「水なます」を初めて食べたのは、もうかれこれ25年も前のことになる。
 当時、釣りキチそのもので毎週土曜日には外房へ、相模湾へ、遠く茨城県、福島県、静岡県にまで深夜クルマを走らせていた。
 さて、時期は梅雨の最中。
 外房はイサキ釣りの最盛期を迎えていた。
 でもたどり着いた千葉県館山市布良の海は大荒れだったのだ。
 午前4時過ぎ。
 宿の前、釣り人の「今日はダメだろ」が挨拶代わりだった。
 やはりその日は船が出なかった。
 こんなとき釣り師は悩むのだ。
 不眠のためにクルマで眠っている間にも海は凪いできている。
 明日は出るに違いない。このままここに泊まってしまおう。
 時間をもてあましたので舘山の町をぶらり歩き、また布良にもどって民宿を探す。
 なかなか泊めてくれる宿がない。
 一軒だけ、船宿が一間だけあいていて、ついでに日曜日はそこから出船することになった。
 その夜に出てきたのが「水なます」だった。
 夕食なのに目玉焼きがある、イサキの塩焼き、ゆでたクルマエビ(?)、冷えたお吸い物、ナスの炒め物などにがっかりしていたら、真ん中にどかんときたのが氷がいっぱい入ったガラスのボウル。
 これが「水なます」だった。
 静岡県にも同じような料理があって、そちらは「がわ」という。
 ようするに魚のたたいた身が入った冷たいみそ汁だ。
 そこに青じそ、ネギ、ミョウガやキュウリなどがせん切りになってたっぷり放り込まれている。
 ごまが入ることもあるし、辛い青唐辛子が入っていることもある。
 ネギではなく玉ねぎのときもある。
 あまりにも簡単に出来て、夏には最高の料理なので、一度食べたら病みつきに。
 今では我が家の定番料理のひとつとなっている。

 魚はイサキ、マアジ、ソウダガツオ類などなんでもいい。
 なんでもいいが、鮮度だけはよくないと生臭くなってしまう。
 できるだけ新しく、出来れば旬のもので脂がのっていてほしい。
 さて、そこで今期初めての「水なます」作りに選んだ魚が島根県浜田市の「吉勝丸」が巻き網であげた「どんちっちあじ」だ。
 巻き網なら鮮度は望めないように思えたのだが、触ってみたらいい感じなのだ。

 大きさは1本100グラムほど。
 3本ほど買い求めてきて、三枚に卸して皮を引き、とんとんと細かく切る。
 片や青じそ、キュウリ、ミョウガを刻んでおく。
 みそをすり鉢ですり、水を入れてといていく。
 そこに氷をたっぷり。
 みその量は氷が入ることも鑑みて大目にする。
 みそ汁状のものがチンチンに冷えたら、アジの身を放り込む。
 アジの欠片がチリっと音を立てるように収縮し、表面にキラキラした脂が浮き上がってくる。
 後は薬味を放り込み、煎りごまも振り、ご飯にかけて食うだけだ。
 我が家では「水なます」だけ作ることはない。
 隣には煮込みハンバーグやポテトサラダがあるのに、太郎はぶっかけ飯で三杯目。
 一年ぶりの「水なます」は最高である。

 うっとうしい曇り空、高い湿度、身体がだるくて不快指数高し。
 そこに冷たくみそ辛い、汁がなんともいい。
 汁にはマアジの脂と、その甘味、そして旨味がほどほどに溶け込んでいる。
 やはり「水なます」用にも脂ののった魚がいいということに気づかされた。

 さて、そろそろ7月も中旬に近い。
 梅雨は明けないのであろうか? 高木ブーじゃなくてゴロゴロ様来てくだされ。

島根県浜田市「どんちっち」
http://www.city.hamada.shimane.jp/kurashi/nousui/suisan_don.html
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑、マアジへ
http://www.zukan-bouz.com/aji/aji/maaji.html


ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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